2011年02月10日

真面目に。

田村装備開発です。

最近ギャグが多かったので、真面目に書いてみます。


先日、ある方から電話を受けました。

『良い部隊にしたい。何でも良いから助言を』

との事でした。

特に隠す必要は無いと思うので、ブログネタにします。

以前のブログ内容と被る所もあると思いますが、少し深く書いてみます。



以前、尊敬する上司が、

『お前達はただの同僚ではない。親友でもない。生死を共にする仲間という事を認識しろ』

と言いました。

すぐには理解が出来ませんでした。

少し考えてみると、

私達部隊員(元ですが)というのは、一種独特な関係を築いています。

普通、仲の良い友人であっても、ある程度は気を使いながら発言をしますが、

私達は、訓練や現場であれば発言に気を使いません。

本来、言いたく無い事も言わなければなりません。

人は、他人の欠点を探すのは得意ですが、自分の欠点を探すのは苦手です。

では、誰が自分の欠点を教えてくれるのかというと、仲間です。

優しい言葉を発する人間が優しい訳ではありません。


命懸けの職業は多々あると思いますが、私達もそうでした。

遺書を書いた事もあります。

その現場で頼りになるのは仲間です。

けど、

本当に命を預けられる仲間が何人いたのか?

と考えると、全員ではありませんでした。

私は、信用していない人間が数人いました。

同じように、

私の事を信用できない人間もいたはずです。

双方が信用し合うのは難しいことだと思います。


現職の方からよくある質問で、

『撃たれないクリアリングを見せて欲しい』

というものがあります。

しかし、その質問に答えられる人間はいません。

絶対に撃たれないクリアリングなど存在しないからです。

1,000の現場があれば1,000通りの答えがあり、

目的を達成すれば、それが1つの答えではあるが、最良の動きとは限らない。

同じ現場は2度と無いのです。


戦術には答えが無いと説明した場合、真に理解できる方はそれほど多くはありません。

この部屋はどの様にクリアリングをするか?

この障害物はどの様に排除するか?

この相手をどの様に倒すか?


という単純な質問をする人が多い理由としては、

人は答えを知りたがるのですね。(多分)

答えを提示されないと不安になるのでしょう。

戦術トレーニングを行なう者としては、不適切な表現に思われるかもしれませんが、

絶対的な答えは人の脳では判断できません。

単なる思い込み、又は、推測でしかありません。

仮に 『正しい』 『間違い』 を判断できる人間がいたとするならば、

その人間は(人生)全てにおいて大成功をするのでしょうが、

そんな人間は、この世が始まって以来1人もいないと思います。

正しいだの間違っているだの、そんなものは、

人生の歩みで蓄えた自己の中にしか存在しない、単なる言い分でしかありません。

つまり、答えなんて誰にも分からないという事です。

では仮に

事件があり、私がその現場に赴き、突入し、成功したところをビデオで撮影したとしても

その映像は答えではありません。

組織の目的

所持していた装備

私の錬度

敵の錬度

気象状況

自己の体調

精神状態

その他、多くの事が絡み合った状況の中で、

味方・敵・不明者・人質の関係を相対的に考えて、最良と信じる行動をしているからです。


つまり、最良と『信じているだけ』という事です。

であれば、言い方を換えれば、適当となります。

ただ、

訓練を積み、尚且つ、法的根拠に基づき行動できる知識を得た上での適当です。

このような思いに至った経緯としては、

特定の技術を限定的に使用する限り、それが足枷となるからです。

如何に合理的な技術であったとしても言える事です。

適当という言葉には幾つかの意味合いがあります。

『いい加減』も適当ですし、

『目的に合う』も適当です。

今回は後者の意味合いで適当を使っています。

この適当に行なえる人間が、何人いるかで部隊の強さは大きく異なります。

部隊員の動きを1~10まで考えたとしても、必ず穴があります。

これは、自己で考えられない人間には有効ですが、ある程度の強さしか得られません。

そして、マニュアル通りに動く人間は穴を突かれるとフリーズします。

そして、『想定外だった』と言いだします。

そんな人間を何人も見てきました。

しかし、想定外を失敗の言い訳にするべきではありません。

私はギャグで、『想定外だ!』『規格外だ(笑)』という言葉をよく使うのですが、

現場において想定外だから失敗しました。なんてギャグは通用しません。

想定外の時どうするの?という事です。

人生において、全てが想定通りに事が運ぶわけがありません。

少なくとも現在の科学では、未来を知る事はできません。

だからこそ、決め事をつくり過ぎてはいけません。(ある程度はつくるべきですが)

もっと流動的に、自由に考えるべきです。

となると、同じ部隊員である限り、意思の疎通が必要です。

訓練だけでは無く、一緒に食事をする。遊びに行く。

等、普通のコミュニケーションを通じ得るものです。

戦闘だからコレ。というものではありません。

そこまで意思を統一できた、信頼できる人間を仲間と言うのではないか?

と思っています。

その仲間が、

自分の命を犠牲にして、貴方の命を救ってくれるかは分かりません。

予想はできても特定はできません。

しかし、

『俺の背中は必ず守ってくれる』

と信じ合える仲間を増やさなければなりません。

何度もブログに書いているのでクドイかもしれませんが、

仲間が互いに背中を守り合うこと。その信頼関係を築かなければ現場臨場は不可能です。

ロゴマークの意味合いです。
真面目に。


最後に、

『上司が理解してくれない。発砲許可をしてくれない。こんな状況では戦えない』

と言っていては、いつまでたっても部隊は強くなりません。

発砲許可をしてくれないのは誰の責任ですか?

上官の出世欲も当然あるでしょうし、

システム上の問題もあると思います。

けど、

上官から『発砲許可』を得られるだけの信頼を得れば、多少は状況が変化するのでは?

と思います。

狙ったところに銃弾を当てられない隊員

法的根拠も判例も知らない隊員

直ぐに冷静さを失う隊員

ただただ格闘の強い隊員

足だけ速い隊員

筋肉だけ鍛えている隊員


『発砲許可』なんて出せるわけがありませんね。

私が上官でも出しません。人質撃ったら嫌なので。

人の非ばかり突つかずに、隊員も反省するべきです。

それを教えてくれるのも仲間ですね(笑)

尚、当然ですが上官も反省するべきです。


みたいな事を2時間位話していました。

では、お休みなさい。

田村装備開発(株)






タグ :戦術

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Posted by ミスター&ミセス 田村  at 23:35 │Comments(11)その他

この記事へのコメント
田村さん。
いつもながら深いお話ありがとうございました。

「いい部隊」というのも何を一番に置くかという事で
コンセプトも変わるでしょうし、
確かに難しい質問ですよね。

あと、上官がこうしろと言っただけでもいい部隊は出来んでしょうし、
下っ端だけが盛り上がって、上が頭を押さえ込むだけではだめでしょうし…。

結局、部隊のみんな、
身分や持ち場の隔てなく、
常にそれを考えていき、
実践し、コミュニケーションを図る…。

確かにそれだけではないでしょうが、
様々な方法を駆使して考える必要はありますね。

失礼しました。
Posted by kimi at 2011年02月11日 01:06
人生においても、同じ場面を何度も経験する事は無いと思います。
ただ同じ様な事例に出くわした時に対応できる、知識、経験をどれだけ積んでいるか、によって幅が広がってくるのでしょうね。
特に法が絡んでくるとそのジレンマは大きいと思います。その時に信頼出来る仲間が入れば、選択肢は最良の物に近づけて行く事が可能になるんでしょうね。
Posted by K.BOU at 2011年02月11日 06:06
自分の職場等を含めチームで何かしたり、共同生活する仕事においては「信頼」というのはもっとも大切なことですね。
 自分たちの場合は1隻の船に17名で乗り込んで生活、仕事を共にするため「運命共同体」とかって言ったりします。
 これは経験しないとわからないものですね。
Posted by seaman at 2011年02月11日 18:24
さすがは田村社長! 素晴らしいです。
一般の会社も同じというか
この世の中をより良く生き抜くために大切な考え方だと私も思います。

ただ、私のような善良な市民からすると
そのような部隊の内情、規定などはわかりませんので
一般向けの例えとして“何台かの車で買い物に行く”なんてのが考えやすいですかね?
自分・仲間の体調と行動、道路交通法に気象状況、他者(道で出会う全てのもの)の行動
これらが絡み合う中、買い物という目的を達成する。
また、絶対に撃たれないクリアリング = 絶対に事故らないハンドリング。でしょうか?

と考えていくと、絶対と言うのは存在しないですよね。
(少し前に会社で、絶対なんて事はこの世に絶対に無い!なんてオヤジギャグをかましてましたw)

しかし、こうゆう記事を書いたりすると反発とか起きたりしませんか?
あそこは何も教えない所だ、何にも考えてない所だ!とか。 あっ別に気にしてませんか(^^)

まあ私は、ただの善良な一般市民ですが、応援してますので頑張ってくださいね!
Posted by nono at 2011年02月11日 19:06
お久しぶりです!2月の総合訓練でお世話になったものです。毎回楽しくブログ読ませていただいてます。

今回の内容は、とても共感がもてます。本来ならばスペシャリストである者逹はこれぐらい考えられて当たり前なのだと思っていましたが現実はそうではないんですよね。
最近よく言われているのが「ベターはあってもベストはない」です。

最初は誰でもベストを目指してしまうもの。それが悪いわけではなく成長していく上で必要な過程です。だから問題視すべきは、ある程度の経験や知識、年数を積んできたはずであろう人がベストを求める行為です。つまり意識が低いと言うことになります。

いつの時もどこの場所でも悩めることは同じなんですね

本当はもっと書きたいですが、出来れば今度お会いする時にもっと色々とお話ききたいです。
Posted by お久しぶりです。 at 2011年02月11日 22:59
現代人は答えが無いと困るらしい。1か0か
 NETを使うと何でも調べられるのが原因で、答えの出ない事は考えたくない。理由は、めんどうだから、スッキリしないから、だそうですよ。それで恋愛もしなくなってるとかで、そもそも…(終わり)

以前、販売営業の方に
「ナンダカンダ言っても自衛隊さんですよ、ボーナスも出ますよね」
と言われたときカチンときたので
「けどアナタ、この給料で命かけられますか?」
と言ったら濁されて場の空気が濁っちゃいましたw大人気なかったっす。
と、話し変わりますが命をかける仕事は独特の信頼関係で出来上がっていて民間の方々に説明しにくいんですがnonoさんの“何台かの車で買い物に行く”って例えが非常にわかりやすくて目からウロコでした、今度使わせてもらいまーす。

なんか決まった事をやって、出来たところで想定通りじゃ得るものが少ないですもんね。だって想定通りだし、時間決まってるし。想定のない訓練をしてAARやって、訓練してAARやって訓練して、それでも見えないから面白いのに、考えることをめんどくさがる人が訓練作るから(作ってない、コピペしてるだけw)いつも通り計画が進んでメデタシメデタシ。

さすがに飽きてきましたw
Posted by TK-S at 2011年02月13日 17:49
 前の職場での師匠から、よく
「自分のAOも満足に見れない奴が、人のカバーなんかできるか!」
「たとえそんな奴がカバーに入ったとしても、それはただのおせっかいでしかない!」
「上っ面だけの気を利かせるな!気を利かせたつもりの自分に酔うな!」
と散々怒り飛ばされたことを思い出しました。

 田村様のマジメで深い記載に、鍛えること、考えること、鍛えさせること、考えさせることを今一度深く追求せねばな~、と思います。
 非常にためになりました。

 よし、マジメに練習しようっと。
Posted by 周防平民(備後官憲)H at 2011年02月14日 20:32
kimiさん
おっしゃる通り、『良い部隊を・・・』と言われても難しいですね。
一例を挙げますと、
人質に拳銃を突きつけた凶悪犯がいました。
スナイピングで脳幹を粉砕すれば、凶悪犯は指一本動かす事も出来ずに倒れます。そして人質は救われます。
であれば、人質にとって『良い部隊』はその様な行動をとれる人間です。
しかし、犯罪者の射殺には同意できない人もいます。そのような人にとっては、射殺をする部隊は『良い部隊』にはなりません。
誰に対して『良い部隊』になりたいのか?
組織?自分?ホステージ?
それが分からなければアドバイスができませんね。
ただ、仲間同士の信頼関係を築く事は、どのパターンでも必要と考えています。

K.BOUさん
その通りだと思います。
過去の事例を参照し、様々な引き出しを持つことが大切ですね。
同じ現場は二度とありませんが、参考にするべきと思います。

seamanさん
信頼関係を築く事は本当に難しい事です。
言葉だけであれば簡単ですが、本心、信頼し合える仲というのは簡単に築き上げられるモノではありません。
私の場合、危機が迫った時に実感しました。

nonoさん
ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです。
車の例、本当に分かり易いですね。
私の言いたい事は同じです。
戦闘になると、難しく考えてしまう方も多いのですが、普通の事を普通に考えれば良いのだと思います。
私は文の構成が下手なので、あまり上手く伝えられません。
車の例、以後使わせて頂きますmm
『絶対なんて事は、この世に絶対無い』
矛盾した言葉ですが、好きです(笑)
今回の様な記事を書くと、確かに反発される方もいると思います。
特にプライドの高い人は、『○○が良い』『○○が悪い』と決め付ける癖があるので・・・
商売的には当り障り無い言葉を使うべきかもしれませんが、良い訓練を行ないたいので本心を記載してみました。

お久しぶりです。さん
こんばんは。
戦闘にはとても難しい問題があります。
それは、判断ミスが死に直結するからです。
死と隣り合わせの職業は多々あるかと思いますが、その中でも、人と人との戦いである以上、『適当に行なえ。』と言われて素直に受け入れられる人は殆んどいません。である以上、答えを欲するのは当たり前だと思います。
なので、教科書を欲し、型を追求するのは悪い事とは思いませんし、ある種必要な事かもしれません。
しかし、更なる上を目指すのであれば、束縛されないように注意する必要があると思います。

TK-Sさん
ネットは便利ですが、何でも信じてしまうのはマズイですよね。
よく『情報の渦に・・・』と言いますが、、、
ネットや書籍に的確な答えがあるかというと、?な部分が多いです。
特に私の専門分野について言いますと、嘘だらけですね(笑)
話は変わりますが、
私が見てきた想定訓練は、作戦が成功するように組立てる人が多かったです。(人質を絶対に射殺しない等・・・)
事前のシナリオ通りに進む訓練は遊びですよね。

周防平民様
お久しぶりです。
私の身勝手な文章を、その様に評価して頂き恐縮です。
私もよくブログを拝見し、勉強させて頂いております。
いずれまたお会いし、色々と意見を交換できれば幸いです。
今後とも宜しくお願い致しますmm
お時間が合えば、いつでも遊びにいらして下さい。
Posted by タムヤンタムヤン at 2011年02月15日 01:41
TK-Sさん

言葉がたりませんでした。
(人質を絶対に射殺しない等)

(対抗役が人質を絶対に射殺しない等)
です。
Posted by タムヤンタムヤン at 2011年02月15日 01:49
そもそも一般部隊でそれを要求している俺が間違ってるのかもしれませんねw
Posted by TK-S at 2011年02月17日 02:25
TK-Sさん

そうかもしれませんね。
けど、要求する人が増えると変わるかもしませんね!
Posted by タムヤンタムヤン at 2011年02月17日 21:42
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